昨日、私のブログを読んでくださっている方からメールをいただきました。
「日本では、太極拳=健康に良さそうだ、というイメージは随分、定着してきました。
ただし、武術的な要素を強化するのか、健康体操がわりにするのか、その違いを分かっている一般の人はそんなにいません。太極拳愛好者でも、そこを曖昧なままにやっている人は山ほどいます。そこを指導者が上手く説明出来るかどうかにかかっています。
それから、公民館やカルチャーセンターに関しては、太極拳はずいぶん盛んにおこなわれていて、地方在住でも、様々な流派、団体のものが、あちらこちらに教室、稽古場はあります。変な言い方になりますが、競合先はおおいです。
かなり長期間かけて、長い目でみて、焦らずじっくり、呉家太極を浸透させる覚悟が必要だと思います。
がんばってください。
わたしもがんばっていますー。
太極拳を愛するものとして、応援しております。」
シンガポールにいる私にとって、日本の太極拳の状況は、自分が昔2年程度自宅の近所でかじったとき以外の情報はほとんどないので、非常にありがたいです。励ましていただいたのも非常に嬉しいです。本当にありがとうございます。
改めて日本の状況を聞かされて、ちょっと不安になってきました。競合先は多いのかぁ。。。TwitterやFacebookでも太極拳のことを書いている人は確かにいるし、教室を持っている人もそれなりにいます。中華系の人たちの多い、より中国に近い環境で修行ができているとはいえ、それがそのまま日本に通用するのかと安易に考えていました。
一日近くウダウダと考えていましたが、次第と吹っ切れてきました。目の前にあることに集中するしかないということを思い出しました。割り切って考えてみると、そんなに不安になる必要もないかなって感じです。
再度メールを読みながらこんなことを考えました。
初めの段落のところは、シンガポールでもそんな感じです。最近では中医学の先生だけでなく、西洋医学の先生も太極拳を進めることがあります。うちの教室にも医者に勧められたので太極拳をやりに来たという人は結構います。そういった人は健康体操の域を出ることはほとんどありません。レッスン度に教室まで来て、言われるように体を動かして、汗をかいて気分良く帰るって感じです。
太極拳が武術として本当に使えると思って、強くなりたくて、うちの教室の門を叩く人はほとんどいません。参加してみたら、今まで思っていたのと違った体の動かし方で、技を使うことができることを発見して徐々に興味を持つっていうパターンがほとんどです。
うちの師匠の教え方は、套路を中心として教えながら、その中で動きの応用を説明しながら少しずつ理解してもらっていきます。ある程度套路ができるようになると推手で実際の動きの応用をやったりします。武術を前面には出していないけど、興味を持ち続ければ、そのレベルまでいけるって感じです。このスタイルは私も踏襲します。
二つ目の段落も似たような感じで、コミュニティ・センターと呼ばれる公民館のようなところで、太極拳教室がよく行われています。例えば簡化24式を3ヶ月で学びましょう、みたいな感じです。24式が終わると、扇だったり、剣だったり、生徒さんを飽きさせないように、いろいろなことを教えてくれます。うちの教室にくる方の中にも太極拳教室をそういったイメージで捉えられている方がよくいます。うちの教室はかなりじっくりと基礎を作って、その上で、じっくりと套路を教えます。そのため、コミュニティ・センターの教え方をイメージしている方々は、反応が大きく二つに分かれます。
一つは太極拳はこんなに大変で、難しいとは思っていなかった、といって早々に去っていってしまう方々です。コミュニティ・センターではゆっくりと簡単そうに動いているので、太極拳は易しいものだと思い込んでいる場合がほとんどです。
もう一つは、足腰の鍛錬にもなるし、しっかり学べて良い、コミュニティ・センターとはいい意味で全く違う、と捉えてくださる方々です。こう捉えていただける様になった方々は長続きすることが多いです。
実は私、社会人生活約30年間、ほとんどの時間を営業として過ごしてきました。営業マンにとって一番辛いのは、全く競合がない状態です。競合が全くないっていうのは大きく分けて二つあります。一つは、市場が一つまたは少数の大手によって完全に寡占状態になっている状況です。この場合は、売っているものに対する需要が存在するので、まだ絶望的ではありません。何か既存の提供者と違う利点を提示できれば、大きく伸びる可能性はあります。
もう一つは、全く需要がない状態です。これは非常に辛いです。エスキモーに冷蔵庫を売った話のように、全く想像のできない使い方を提案することもありますが、例えば、イスラム教徒の少ない日本で、イスラム暦のカレンダーを売ろうと思ってもほとんど需要がありません。部屋の装飾品として使いたいっていう人は多少いるかもしれないですけど。
なので、競合先が多いのはいいことだと思います。少なくともないよりはずっと良いです。特に私の教室の場合には、大きく拡大させて市場を席巻しようと思っているわけではなく、30人程度の生徒さんが集まればそれで十分、と思っているので、周りに太極拳に関心を持ってくれる人がいることはいいことです。
シンガポールの教室の運営を見ていて、時間がかかる、そしてそれほど儲からない、というのは肌で感じています。自宅で始めようと決めたのはしっかり教室の基盤を作りたかったからです。家賃を支払う必要がないので、じっくり時間をかけて、本当に興味のある生徒さんたちを集めることができます。生徒さんが増えてくれて、自宅が手狭になる様なことが万が一あったら本当に幸せです。
自分の教室は自分が健康である限り、定年なく続けられるので、本当の意味でのライフワークです。
何はともあれ、不安は横において、まずは、今できること、自分の技の鍛錬に集中します。
これからもいろいろな話題を紹介していきます。
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