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執筆者の写真Mitch Sato

太極拳の一丁目1番地1号 その1

昔、豊洲一丁目1番地1号に本社のある会社に勤めたことがあります。1−1−1がつく住所ってなんか特別な感じがしませんか?何かの始まり、まず初めにやらなければならない重要なこと、こんな印象を与えます。もっともこの会社がそういった印象を与えるのに相応しかったかどうかはよくわかりませんが。


閑話休題。


太極拳の一丁目1番地1号ってなんでしょう?太極拳を全くやったことのない人だと、ゆっくりと動くこと、なんて答えが返ってくるのかもしれません。太極拳にも大切だと言われるものは数多あって、どれが一番だ、という正解はないと思います。太極拳をやっている目的によっても、学んだ深さによっても変わりうることです。


私が考える一丁目1番地1号は、スクワットです。呉式太極拳教室「太極の小径」でも、これを「いろはのい」と考えて指導していきます。様々な、姿勢に関する要請、精神的な要請を自分のものにしていくための最初のスタート地点、そして何か問題があったら戻ってくる場所、として位置付けています。


スクワットを行う前には、きちんと立たなければならないので、きちんと立つことが、動作としてはスクワットに先行します。ただ、初学者が初めて学ぶものとしてきちんと立つことから始めると、動きがほとんどないため、何をどう治すと良いのかをなかなかわかってもらえません。なので、少し動きのあるスクワットが色々な動きの基本として、最初に学ぶもの、もっとも基礎になるものと考えています。


なぜ、スクワットがそんなに重要なのか、と言う疑問はあると思うのですが、それを説明する前に、どんなスクワットを学ぶのかを説明します。


通常のスクワットってこんな感じではないでしょうか。



膝を広げて、お尻を後ろに出すことで体が下がります。このスクワットとうちの教室で学ぶスクワットはかなり違います。このスクワットが悪いと言うわけではありません。実際、腿の前側の筋肉を鍛えるのであれば、このスクワットは有効です。


では、うちの教室で学ぶ太極拳のスクワットはどんなものなのか。まずは正しい姿勢から見てみましょう。





まず、踵の間は足一つ分あけ、つま先を45度程度開きます。


頭からお尻までが一直線になります。膝はつま先よりも前に出ません。膝と爪先は同じ方向に向きます。膝とつま先をが垂直な線で結ばれる状態にして、背中を真っ直ぐにすると、腰は踵よりも後ろに位置するようになります。こうすることで、後ろに体重をかけてしっかりと座る姿勢が出来上がるわけです。


通常のスクワットに慣れている人にこのスクワットをやってもらうと、大抵は膝が前に出て、お尻を引っ込める動きになってしまいます。背中が少し後ろに傾くこともよくあります。


下の写真は、膝がつま先よりも前に入っている例です。腰が前に動いてしまっていて、状態が少し後ろに傾いています。



これだと膝に必要以上に負荷がかかってしまい、続けていると膝を痛める原因にもなります。


そこで、膝を前に動かすのではなく、横に広げながら体を下ろす動きだと言う説明をします。膝を横に広げようとすると、腿の内側の筋肉を使うことになります。この内腿の筋肉は通常の運動ではあまり使われることのない筋肉です(この筋肉を日常的に使う運動は上場ぐらいしかない、って聞いたことがあります。両方の腿をで馬の体を挟むからだそうです)。初めてやる人はなかなかうまく使えないので、膝を開こうとすると、今度はお尻が後ろに出てしまいます。つまり「通常のスクワット」に近い形に戻ってしまうわけです。


ここで意識してもらいたいのは、骨盤の傾きです。足を開いて体を下ろす時、骨盤を地面に対して垂直方向に保つことが重要です。あまり使われることのなかった内腿の筋肉を支えるようにしながら、骨盤を立てていく、これができるようになるのが、うちの教室での正しいスクワットです。


ちなみに、膝を横に開こうとすると、下の写真のように足の裏の内側が地面から離れてしまう人もいます。足の裏は全体が常に地面に接していることが必要です。足の裏と地面との設置面積が多ければ多いほど、体は安定します。



どうでしょうか。たかがスクワットで、初学者でもこれだけのことを学べます。太極拳というと兎角ゆっくりとした手足の動き、と思われている方も多いと思います。こんな感じでしっかりとした基盤を作ることで、「100歳まで自分の足で歩ける心と身体を作る」ことのサポートをしていきます。


でも、正しくやれるようになることだけで終わらないのが、呉式太極拳教室「太極の小径」です。続きは次回のブログでご紹介します。




これからもいろいろな話題を紹介していきます。

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