個人レッスンをやっていて気づいたことです。
太極拳の動きってゆっくりです。でも、適当にやれば早くやることもできるわけです。特に体力に自信のある人で、他の人の動きを真似るのに長けた方だと、動きが速くなる傾向にあると感じています。
通常レッスンの時は、1、2、3と一つ一つの動きに合わせて1から3までを繰り返して数えます。教える時にも、1の時は、こういう動き、2の時にはこういう動き、という感じで教えます。それぞれの動きで注意すべきことを合わせて教えるようにしています。
個人レッスンをおこなっている時に、速く動く傾向のある生徒さんがいました。ご本人はいい加減にやっているつもりはないのですが、やはり注意すべきところに注意が入っていない感じを受けました。「もう少しゆっくりやってみましょう」と声をかけてみましたが、速度はそれほど変わりません。
そこでその方の動きをじっくりと観察して、問題のありそうなところ、意識がいっていないところを探しました。そして、一つ一つの動作の時にどこに注意をするかを説明しました。元々運動能力のある方なので、すぐに説明内容を飲み込んでくださって、じっくりとやり始めると、動きの速度はゆっくりになりました。
注意した内容を一つ一つ確認しながらやると、速く動けなくなるのは当然のことです。太極拳の動きはなぜゆっくりなのか?という問いはよく聞きますが、この方を見ていて、ゆっくりな動きは目指すものではなくて、「必然」なのではないか、って思いました。
ちょうど前日にも別の方に個人レッスンを行いました。以前から動きが速くて荒いなぁ、どうやって治そうかなぁ、って考えていた方でした。準備運動の一環でスクワットをやってもらっていたら、なんだか動きが落ち着いて見えました。動きがゆっくりになっているし、今までよりも正しい感じがしました。
なんかあったのか、って聞いてみると、今まで言われていたことを色々と考えていただけ、だったそうです。別にゆっくりやろうと心がけていたわけではなかったそうです。
私自身も、インストラクション付きの音楽に合わせて108式套路をやるときと、音楽なしでやる時にはかなり速度が変わります。音楽があると、どうしてもそれに合わせて進めてしまい、その速度で気にすることしか確認できません。音楽なしの場合には、体重の掛け方、掛ける角度、座る深さなどなど、一つ一つの動作をじっくり観察しながら行うことができます。結果、普段は40分で終わる套路が1時間以上かかることになります。
ただ単にスピードを遅くする、意識的に動きをゆっくりにする、ことで長い時間を掛けることもできます。その場合には、ゆっくりにすることが目的になってしまいます。結果として、ゆっくりと行うことに意識が行き、動きの細部に意識を払うことができなくなりそうです。
細部に意識を払うことで、結果ゆっくりとした動きができるようになる、これも成長の過程の一つだと感じました。
繰り返し学んでいく中で、意識を払うことのできる細部の数が増えていきます。当然、動きはさらに遅くなっていきます。
まだ私には未知の領域ですが、達人になると、多くの細部に対して既に意識を払うことなく動けるようになるため、速度を自由自在に操ることができるのではないかと予想しています。その域に達することができる日を夢見て今日も練習します。
これからもいろいろな話題を紹介していきます。
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