先日のブログで、呉式太極拳の套路ができるようになるまででも10年近くかかると書きました。何にそんなに時間がかかるのか、と思われる方もいると思います。今まで教えてきた経験から一つの例を示せたらと思います。
うちの套路は108ステップあります。同じ動きの繰り返しも結構あるのですが、学ぶステップ数は結構あります。基本が同じでも少し捻りが加えてあるステップもあります。通しでこの套路をやると40分以上かかります。
教えるときには、三つのパートに分けます。最初に学ぶときには、表面的な動きを追えれば良いという姿勢で教えます。周りでインストラクターが一緒にやっていて、それで十分で、覚えるところまでは期待しません。
最初にパート1を教えるときには、足腰のトレーニングを優先します。それと同時に、太極拳固有の動きを感じてもらうだけで良しにします。この段階では、足腰がそんなに強くない方が結構多いので、動きを理解して、真似るだけでも結構な努力が必要です。足腰を鍛えながら、パート1を一通り教えるのに3ヶ月ぐらいかかります(以下、期間については、週に2回レッスンを行うことが前提です)。
この後、パート2に直ちに進むのではなく、もう一度パート1を復習します。理解できなかったことが少しわかるようになり、動きも太極拳っぽくなってきます。長い套路を学ぶので、ここで基礎の基礎を築くイメージです。これにさらに3ヶ月かかります。
パート2、パート3はそれぞれ3ヶ月程度かかります。つまり表面的な動きを学んで、他の人がやっている動きについていくことができるようになるのに1年近くかかります。
一通り学んだ後は、6ヶ月ぐらいかけて、三つのパートを覚えられるように繰り返し練習をします。明らかに間違っている動きは直します。例えば、動く順番が違うとか、向いているべき方向が違うとか。順番通りに動けるようになり、一人で練習することもできるようになるのがこの期間の目標です。
約1年半かかって、自分で套路を練習できるようになって、次のステップ「修正」に進みます。
「修正」に関しては、何をやるのか、だけではなく、なぜ繰り返さなければいけないか、という話題もあるので、また次回に説明したいと思います。
今回のブログを見て、これから太極拳を始めようと思われた方は、腰がひけてしまったかもしれません。もっと簡単に教えてくれるところはいくらでもあります。シンガポールでも、3ヶ月で学べる〇〇太極拳、みたいな教室もあります。というか、そういう教室の方が多いかもしれません。
太極拳は、単なる知識、経験に終わらせてしまうこともできます。一生極め続けるもの、としてやり続けるだけの内容も持っています。足腰の強化、健康に資するというのは、一つの側面にしか過ぎません。「禅」の一つの形態として、身体だけでなく心を落ち着かせるという側面もあります。太極拳を学ぶ仲間とのコミュニティとしての側面もあるでしょう。さらに学び続けると、自衛のための手段ともなります。
そんな太極拳との出会いの場所を提供できる教室にしていきたいと思っています。
これからもいろいろな話題を紹介していきます。
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