太極拳には、流派も套路の種類も数多あります。いろいろなものが存在すると、より多く学びたいと考えるのが人の性だと思います。
呉式太極拳の套路だけでも、きちんと学ぼうとすると10年単位の時間がかかります。表面的な動きを学ぶだけであれば、半年もあればできるかもしれません。何を目指すのかにもよりますが、太極拳と他の運動との違いがわかるようになるためには、短時間で通り過ぎるのは難しいように思います。でも、世の中に10年経ってもまだ教えられるものがある師範ってどのくらいいるのかな、ってふと思います。そんな人に出会えた人が、むしろ幸運なのかもしれないです。
太極拳は続けたいけど、ある程度動きがわかってくると、練習をすることがマンネリになってきて新しいことを学びたい、という方は結構多いと思います。続けることは非常に重要なことなので、それが原動力になるのであれば、新しいことに挑戦しても良いと思います。
できればある程度は一つの内容を自分のものにしてから次に移った方が良いと思います。それぞれの流派はそれぞれの個性を持っています。同時に学ぶとどちらつかずになるリスクがあるように感じています。
大学にいた頃、語学が好きで、いろいろな言語に手を出しました。スペイン語とドイツ語を一緒に学んだことがあります。本を読む文には大きな問題はなかったのですが、声に出してみると、発音が混ざってしまって酷いことになりました。結局どちらもまともにできるレベルまでにはなりませんでした。
世の中には、マルチタスクでいろいろなことを同時にできる人もたくさんいると思います。私が不器用なだけかもしれませんが、題名に挙げた問いに関しては、私は否定的です。
シンガポールで教えている学校でも、以前楊式を学んでいらした生徒さんが何人かいます。その方々は、楊式を辞めて、呉式一本に乗り換えられていました。でも、何度修正しても楊式の癖はなかなか抜けないものです。おそらくもう一度楊式をやってみると、今度は呉式の癖が抜けないってことになるように思います。
太極拳は心身を健康にするための媒体だと割り切ってしまえば、百貨店のように様々な流派をレパートリーとして揃えるよりは、一つのことをじっくりと学んで自分のものにしていった方が良いのではないかと私は考えています。そのほうが、じっくりと体のあるべき動きを学ぶことができ、心の落ち着きを持てるまでに動きを高めていくことができるように思います。
こんな考えを持つに至った過程をご理解いただくために、明日から、呉式太極拳を学ぶために通過しなければいけないプロセスをご紹介していこうと思っています。
よろしければご一読ください。
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