太極拳を習っている時は、できない動きがいくつもあって、どうやったらできるのだろう、って随分悩みました。柔軟性が足りなくてできないこともありましたが、身体ではなくて、頭が硬くて、理屈ではこうやればできるはず、という考えを崩せなかったために、できないことも結構ありました。
教わるだけではなく、教えることが学べたのは、今回の修行の大きな成果だと思っています。技術を習得すれば、それを教えることができる、と考えるのが普通だと思いますが、自分が習ってできるようになることと、人に教えて、その人ができるようになることは、大きく違います。
初めて学ぶ人に対して、どういう順番で、どんなふうに教えたら、よりよく理解してくれるのかを考えるのって、結構面倒くさいです。
まずは、一度デモをして、全体的なイメージを掴んでもらいます。そして、その動作をやるのに必要な基本的な動作を導入したり、復習したりします。私の場合は、足と手に教えて、その後に合わせるようにすることが圧倒的に多いですが、これは、賛否両論あります。別々にやられると理解できない、ってお叱りを生徒さんからいただいたことがあります。
どこまで正確性を求めるか、どこまで細かく説明するか、も匙加減が難しいところです。あまりに表面的な動きしかやらないのでは意味がないし、かといって、初学者に対して詰め込みすぎるのも考えものです。1度目に習うときには、とにかく動きに慣れてもらうことに集中するようにしています。技を実際にどう使うか、も説明したいところなのですが、初学者に対しては、あまり触れないようにしています。応用を意識しすぎると、動きが帰ってぎこちなくなるためです。
一度習った人の動きを、正しい方向に導くのは、また違った苦労があります。実際に動いてみてもらって、誤っているところを治していきます。この時、自分の手本を何度も示すだけではなく、何がおかしいのかをしっかり言語化して説明するのが結構しんどいと感じています。単に自分が理解できるだけでなく、生徒さんがきちんと理解できるように言語化しなければいけません。
他の学校、流派ではどうなのか知りませんが、うちの場合は、多くの内容が先代の師匠からの口伝で、書き物になっていないため、体系的な説明になっていないことが多かったので、さらに苦労した気がします。生徒さんに教える中で、自分の頭の中を懸命に整理し続けた感があります。
コロナ禍の直前から教え始めたので、そろそろ5年目に入るくらいになります。記録はつけていないので正確な数字ではありませんが、教えることに費やした時間は、2000時間を超えています。
これだけの経験をさせてもらえることは、なかなかないのではないかと思います。シンガポールの教室に感謝しなければいけませんね。
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