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執筆者の写真Mitch Sato

蜂谷邦夫著「老子」

昨日ブログで紹介した、金谷治氏の「老子」に加えて、もう一冊、老子に関する本を読みました。


https://mitchsato17.wixsite.com/home/post/%E9%87%91%E8%B0%B7%E6%B2%BB%E8%91%97%E3%80%8C%E8%80%81%E5%AD%90%E3%83%BC%E7%84%A1%E7%9F%A5%E7%84%A1%E6%AC%B2%E3%81%AE%E3%81%99%E3%81%99%E3%82%81%E3%80%8D



金谷氏の本に比べると、通説に沿った章立て、内容の解釈と言う印象を受けました。もし、私がブログで老子の内容を引用するのであれば、蜂屋氏の本に従った方が誤解が少ないように感じています。


「老子」って言う本は、今のように印刷された標準ものがあるわけではなく、その原本は、出土された資料だったり、碑に刻まれたものだったりします。それぞれの内容は、異なっていて、何を研究の元資料とするかによって、そもそも原文が異なることになります。それらのどれを底本とするかで、使われている文字だったり、記載されている順番だったりが異なります。


金谷氏であれ、蜂屋氏であれ、専門に老子を研究する人たちは、他の人の書いた本に依存するのではなく、どの原本に沿って自分達が研究をしているのかを、底本という形で明らかにしています。金谷氏、蜂谷氏の本は、この底本が異なります。


考えてみれば、印刷技術のない頃、5000文字程度で構成されている老子と言う文書の塊を、手作業で書き写したときに、隣で書き写している人と一字一句異ならないで書き写すことができたら、奇跡と呼べるでしょう。誤字脱字はいくら見直してもあると思いますし、ひょっとしたら、自分の知らない字を、知っている時と勘違いして書いてしまうこともあるかもしれません。自分のブログがこれだけ誤字脱字に塗れていれば、なおさらそう感じます(猛省)。


ただ、初めて「老子」を読む人には、蜂屋氏の本は勧めません。それぞれの章には、もちろん、書き下し文と訳文はついていますが、それをどう解釈するかは、読者に委ねられています。金谷氏がそれぞれの章についてご自身の解釈を紹介しているのとは対照的です。この解釈を読むと、各章の関係や、使われている用語の意味の理解を容易にしてくれます。


様々な原文の比較の細かさ、そこから導かれる、本来の「老子」の姿の推測については、蜂屋氏の本の方が優れていると感じます。様々な原本の比較もかなり細かく行われています。ある程度内容を理解した後に、自分なりの解釈を試みるための下地を作るのには、こちらの本の方を紐解いてみると良いと思います。


個人的には、徹底的に「老子」を読み込んで、自分なりの解釈ができるようにまでなりたいのですが、そこまで時間があるわけでもないし、太極拳を教える立場として必要なことであるとも思えません。贅沢品って感じです。


私が、時間をかけて、古典を徹底的に読むのであれば、太極拳論のような太極拳に関するものをしっかり読んで、自分なりの解釈を加える方が自分にも、自分がこれから教えようとしている人たちにも役に立つはずです。


なので、「欲」深くならず、老子は、繰り返し読んで、そのエッセンスを体得できるようにするのにとどめて、これからは、太極拳理論を深める方向に動いていきたいと思います。腰が重くてなかなか着手ができていないのですが。


老子に関しては、次に、池田知久著「老子ーその思想を読み尽くす」に進みたいと思います。この本は、各章の解釈というよりは、全体的な思想の解明を試みたもので、老子に出てくる様々な概念を掴み取ることにつながることを期待しています。と同時に、久しぶりに中国語で書かれた老子の本も紐解こうかなと思っています。




これからもいろいろな話題を紹介していきます。

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