日本の現状はよく知りませんが、シンガポールでは、自前でスタジオを構えている太極拳教室はそれほど多くありません。多くは公民館(コミュニティ・センターと呼ばれています)や公団の共有スペースを使って行われています。
自前でスタジオを構えると、当然のことながら家賃が発生します。シンガポールの家賃は、日本に比べても全く引けを取らないほど高いです。それを埋めるために、常にそれなりの数の生徒さんを抱える必要があります。そのためには広告費もかかります。この国は、常に高温なので、クーラーをほぼ常時つけておくことになります。光熱費もバカになりません。
シンガポールの教室では、自分が学ぶことと、教えることに注力していたため、経営に直接絡むことはありませんでしたが、費用をかけて、生徒さんをきちんと集めて学校を運営する様子を見ることができたのは、大きな財産だと思います。自分がこれから学校をやっていく上で、直面するであろう問題をいくつも事前に知ることができました。
今でこそ学校の名前がそれなりに知られるようになったのでそれほど苦労はしていないようですが、学校を始めた当初は、生徒さんを集めるのもかなり苦労していました。そのころは、定期的に生徒さんを募集するのではなく、平日の午後と夜、決まった時間にレッスンを行い、参加できる人はいつでもできる形式にしていました。
ある程度学校が落ち着いてくると、時間を決めうちにして、生徒さんの募集を行えるようになりました。例えば、火曜日、木曜日の午後6時から1時間半、と言った感じで、その時間にくることのできる生徒さんを15人程度募集をするようになりました。マーケティングの面から考えると、こんな感じで定期募集がかけられるようになると、かなり安定した感じになります。
ただ、ここに至ると、別の問題が発生します。一つは教える人の手配です。自分の経験では、一人のインストラクターが教えることのできる人数は8人ぐらいが限界ではないかと思っています。15人集まってしまうと、少なくともインストラクターを二人は手当てしなければいけません。専任のインストラクターがほとんどいない状態では、安定してインストラクターを指定することはなかなか容易ではありません。急な仕事が入れば、代役を探す必要があります。インストラクターは、弟子がボランティアでやってきたため、何かあると穴が開きがちでした。
曜日、時間を決め内で募集をかけると、将来、それを変更することに生徒さんからかなりの抵抗があることも経験しました。初めは15人でスタートしたクラスも、いろいろな理由でだんだん減ってきます。1年も経つと、半分ぐらいになっていることもありました。そうすると、二つあるクラスを合併させて効率化を図ろうと学校側は考えます。生徒さんからすると、太極拳に来るために色々と時間をやりくりしているので、変更はしてほしくない、という声が上がるわけです。どうしても折り合いがつかずに辞めていってしまった生徒さんを結構見てきました。
これから始める自分の教室では、自分が完全に専任のインストラクターになるので、予想を大きく上回る生徒さんが集まらない限り、一つ目の問題は起きません。二つ目の問題をどうやって捌いていくかは、まだまだ考え中ではありますが、時間が合わなくても、とりあえず練習は続けられるように、練習会を企画します。せっかくできるようになった身体に良いことを、時間だけの理由で辞めてしまうのはもったいないです。
太極拳の技術だけでなく、学校運営に関しても色々と垣間見ることができたのは本当に幸せです。
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