個人レッスンは、生徒さんとの会話がしっかりできていれば、まずまず希望通りにレッスンを進めることができます。その方の体力とか柔軟性、理解度合いを見ながら進め方を提案することができます。
グループレッスンの場合は、そうもいきません。今いるシンガポールの教室では、非定期に、生徒さんを募集して、新しいコースを始めるので、生徒さんの間で、太極拳に関する知識や経験が大きく異なることはありません。以前、私が東京で学んでいた時に、新しく入会した人が、昔からやっている人と一緒に学ばなければいけない環境とは大きく異なります。
ただ、太極拳の経験や知識が同程度でも、足腰の強さ、体力、柔軟性、動きを記憶する能力等々には当然異なります。同じ説明を聞いても、理解が早い人もいれば、なかなか理解してくれない人もいます。
どの流派にもあると思いますが、「下勢(シア・シ)」て言う動作があります。以前24式太極拳をやった時も、腰をしっかり下ろす必要があって、柔軟性の乏しい私にはきつい動きでした。呉式太極拳の「下勢」も結構きつくて、習う人も、教える人も苦労します。柔軟性も必要なのですが、手の動きと足の動きを合わせるのがなかなか難しい動きです。
数週間前からグループレッスンで、この「下勢」を教えています。足にかなり負担がかかる動きなので、生徒さんから「きつい、きつい」と言われながら、教え続けました。なかなか一度では覚えきれないので、復習にもかなり時間を割きました。理解しづらい動きは、繰り返し説明しました。
このレッスンの参加者は10人強と言った感じです。説明しては、練習し、また説明をして、さらに練習をして、を繰り返します。ガクッとするのは、今説明し終わった内容を、全く聞いていなかったため、質問をされることです。「えーーー、今説明したでしょ」と言いたいのをグッと堪えて、もう一度説明します。たまに我慢ができなくて、「今説明した通り・・・」なんて枕詞をつけてしまいますが。まだまだ精神的に鍛えきれていません。
先週、一通りの説明と練習を終えました。練習をしてもらっていて、ほとんどの人がとりあえずできるようになっていたので、そろそろこの動きから卒業しましょう、と言う話をしました。「きつい、きつい」という生徒さんの声を聞くこともなくなるので、私自身もほっとしていました。この動き、デモをし続けるのも結構疲れるので、教える側にもかなり負担がかかるのです。
今週のレッスンの時に、復習も兼ねてもう一度「下勢」をやってもらいました。動きがめちゃめちゃになっていて、正直がっかりしましたが、こんなものだろうと割り切って、本当に必要なところだけを修正して、先に進もうと思いました。
そしたら、まだ動きがよくわからないので、進んでほしくない、と言うことを言い出した人がいました。一方で、さすがに1ヶ月近くも同じ動きをやっているので、先に進みたいと言う人もいます。多数決を取りましたが、同数ぐらいでした。
きつい、と文句を言われ、先に進もうとすると、戻れと言われ、戻ろうとすると先に進んで欲しいと言われ・・・10人以上の参加者がいると意見が揃うことはあまりないです。結局、もう1週間、同じ動きをやることにしました。来週やる時には、「きつい」と言われようが、とにかく練習を繰り返して、その中で修正をかけていこうと心に決めました。
とかく声の大きい人の意見に左右されがちですが、もっと自分でしっかり進めるかどうかの基準を作らなければいけないなと感じました。生徒さんの意見を取り入れる姿勢は必要なのですが、振り回されてはいけません。
自分が套路をできるようになると、すぐに教えられるように感じることがあります。私もそうでした。うちの師匠がよく言います。習うよりも、教えることのほうが難しい、って。
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